軽量な車体にそこそこのエンジンを乗っけてFR駆動で走らせる、、、そんなNDロードスターを運転するとめちゃくちゃ爽快で気持ちが良いし、自分がクルマを操っている実感を伴う運転感覚が得られて充実感に満ちた体験ができますよね。
実は、NDロードスターにはそんな風にドライバーを虜にしてしまう秘密の仕掛けが色々と施してあります。
僕は2015年のNDロードスターのデビューと同時に購入し、5年で11万kmを走行しました。
その間、地味で単純な操作の繰り返しの基礎的な練習も含めてクルマを上手に走らせるための練習にも取り組んできました。
そこで今回の記事では「走りの楽しさ」の土台となる走りの三要素、すなわち「走る」「曲がる」「止まる」についての魅力にクローズアップしたいと思います。
ロードスターの購入を検討されている方にとってはきっと参考になると思いますし、既存オーナーの方でもまだ気づかれていない魅力をお伝えできるかもしれません。
NDロードスターは「人間中心」という思想のもと、走りの楽しさを徹底的に作り込み、高い完成度で仕上げています。
僕が感じるロードスターの走りの三要素を一文ずつで表現すると以下のような感じです。
- 平凡なエンジンパワーなのにアクセルを踏むのが楽しくなる「走る」楽しさの秘密
- ワインディングでの人馬一体こそがロードスターの真骨頂「曲がる」楽しさの秘密
- 自在なスピードコントロール無くして人馬一体なんて実現しない「止まる」楽しさの秘密
それでは順に見て行きたいと思います。
「走る」楽しさの秘密
NDロードスターのエンジンパワーやトルクは平凡で、速いクルマではないです。
だけど、語弊を恐れずに言えばロードスターはちゃんと「アクセルを踏んで楽しいクルマ」に仕上がっています。
- 高速道路の合流などでついついレブリミットまで回したくなっちゃう
- 山道の登りで低いギアをホールドしたまま引っ張りたくなっちゃう
- しまいには街中の信号のGO&STOPさえも意味が分からないくらい楽しくなってきちゃう
何故パワーやトルクが平凡なのにアクセルを踏んで楽しいクルマに仕上がっているのか。その秘密は下記の3つの要素です。
- SKYACTIV-G 1.5の専用チューニング
- 専用開発されたSKYACTIV-MT
- こだわりぬかれたエンジンサウンドとエキゾーストノート
SKYACTIV-G 1.5
NDロードスターに搭載されるエンジンはBMアクセラに搭載されていた1.5Lの自然吸気ガソリンエンジンと基本設計を同じくするエンジンです。
ロードスター用とアクセラ用のSKYACTIV-G 1.5のスペック比較は下表の通りです。
項目 | ロードスター用 P5-VP[RS] | アクセラ用 P5-VPS |
---|---|---|
最高出力 | 96kW (131PS)/7,000rpm | 82kW(111ps)/6000rpm |
最大トルク | 150N・m (15.3kgf・m)/4,800rpm | 144N・m(14.7kgf・m)/3500rpm |
燃料 | ハイオク | レギュラー |
アクセラ用よりもパワー、トルクとも強化されてはいますが、スペックだけ見ても速いエンジンでないことは一目瞭然です。
特にNDはNCから110kgの軽量化を果たしていますが、パワーウェイトレシオはNC比で悪化しており、スペックダウンと捉えられても仕方のない仕様になっています。
しかしNDに搭載されたP5-VP[RS]型の魅力は単純なパワーやトルクの大きさではありません。
このエンジンの魅力は以下の3点です。
- レブリミット7500rpmまで淀みなく吹け上がるスムーズな回転
- 微妙なアクセルワークにも応えるレスポンスの良さ
- 加速感が長続きする躍度に注目したチューニング
以下、順に見ていきましょう。
レブリミット7500rpmまで淀みなく吹け上がるスムーズな回転
ND用のP5-VP[RS]型はフルカウンターウェイトの鍛造クランクシャフトを採用しています。
これによりトップエンド7500rpmを実現しており、この点はアクセラ用のエンジンと明確に異なる点。
さらに、BMアクセラ用のエンジンに存在していたトルクカーブの谷を無くし、フラットトルクで息継ぎのない加速にチューニングされています。
- 鍛造クランクシャフトによりレブリミットを7500rpmまでアップ
- さらにクランクシャフトはフルカウンターウェイトとし振動を低減
- 全域で谷のないトルクカーブとし息継ぎしない加速感を実現
これにより高速道路の料金所や合流車線での加速で2速のままレブリミットまで回して加速するというようなシーンで、胸のすくような非常に気持ちのいい加速をしてくれます。
アクセラはロードスターの前に乗っていましたが、2000rpmから2500rpmの間あたりで明確なトルクの谷があり、その回転域に差し掛かる度に加速感がスポイルされるのが非常に気になっていました。
設計側の意図としてはシフトアップの合図としてトルクの谷を設けているのですが、引っ張りたい時だってあります。
微妙なアクセルワークにも応えるレスポンスの良さ
フル加速していく時ばかりがNDロードスターの魅力ではありません。
微妙なアクセルワークにも応える良好なレスポンスもNDロードスターの「走る」楽しさを実現しています。
- SKYACTIV-Gの緻密な燃料噴射制御による良好なレスポンス
- 低速でも十分なトルクを発生させる実用性の高さ
- 軽量フライホイールの採用
NDロードスターはアクセルをジワリと踏み足すようなアクセルワークにもきちんと反応してくれるレスポンスの良さを持っています。
また踏み足す時だけでなく戻し側でも微妙な操作を受け付けてくれるところもエライ!と感じます。これは後述するコーナリングでの前荷重の姿勢を作る際にも生きてきます。
フライホイールが軽いのでシフトチェンジでの回転落ちはアクセラやデミオと比べて早いためシフトチェンジも素早く終わるので、加速のリズム感も自在ですね。
シフトダウン時のブリッピングも気持ちよく決まってやり易いです。
アクセルワークへの良好なレスポンス性が、イメージ通りの加速や狙い通りの速度維持を可能にし、ロードスターの走る楽しさに繋がっています。
加速感が長続きする躍度に注目したチューニング
NDロードスターのエンジンは躍度に注目し、加速感が長続きするエンジンに仕上げられています。
「Gを感じる」という言い方をしますが、実は人間が感じているのは躍度=Gの変化率であり、人間は躍度の発生で加速度を感じています。
加速度というのは、加速したり減速したり旋回したりする際、つまり速度が変化したり向きが変わったりする時に生じます。
つまり加速、減速、旋回する時は0G→0.数GへのGの大きさの変化が生じます。これにより人間はGの発生や大きさを感じています。そしてGの大きさの変化の度合いが躍度です。
ロードスターの開発陣はGの絶対値を大きくしなくても、加速中に躍度を発生させ続けることができれば人間は「加速感」を得ることができると考えました。
そしてロードスターのエンジン特性をトップエンドまで躍度が発生し続けるようにセッティングしています。
これによって実際にはそこまで速くないロードスターですが、フル加速中はめちゃくちゃ加速しているかのような感覚を得ることができます。
躍度をキーワードに、7500rpmのトップエンドまで息の長い加速感を味わうことのできる演出が仕組まれています。
SKYACTIV-MT
NDロードスター専用に新開発されたSKYACTIV-MTもロードスターの「走る」楽しさを構成する大事な要素です。
- 手首の返しでシフトチェンジできるショートストローク
- シフトゲートの剛性感、しっかり感
- 球形シフトノブの大きさ、重さ、レザー巻きの感触
SKYACTIV-MTは、ロードスターを走らせている実感を得られる大きな要因の一つかなと感じます。
アイドリング中にシフトレバーに伝わってくるやや大きなブルブルとした振動は、軽量フライホイールの採用によるもの。
これもエンジンを搭載した車両を自分の手足で動かしている実感を得るのに一役買っています。
NDロードスターのスケルトンを見て気づいた人もいるかもしれませんが、SKYACTIV-MTのケーシングはつるんとした表面になっており、リブがありません。
本来はケーシングの剛性や強度を保つために表面にリブを立てるのですが、コンパクト化・軽量化を進めたNDではどうしてもケーシングにリブを立てる寸法が確保できませんでした。
そこで取られた方法が、ケーシングの内側の厚みを場所によって3次元的に滑らかに変化させることで強度と剛性を保つことに成功しています。
こんな複雑な形状の鋳物の鋳造品質を保つのは非常に難しいはずです。
トランスミッションの設計者と鋳造技術者の間で喧々諤々の議論と検討がなされたことは想像に難くないですね。
そしてちゃんと実現して発売に漕ぎ着けるのが変態的ですごいです(褒めてる)。
エンジンサウンドとエキゾーストノート
ロードスターのエンジンサウンドとエキゾーストノートは純正状態でも走りの気持ちを高めてくれるいい音だと感じませんか?
音量の大きさではなく走りの楽しさが湧き立つ音質を追求したのがロードスターのエンジンサウンドとエキゾーストノートです。
これを言葉で表現すると「軽快なビート感を伴うエンジンサウンドと濁りのない「フォーン」という澄んだエキゾーストノート」って感じでしょうか。
自動車の音は部品そのものが発生させる音だけでなく、剛体の共振により発生する音の影響も大きいです。
NDロードスターではエンジン音の心地よいビートをより際立たせることを狙い、実はデフギアのマウントをチューニングしてボディと上手に共振させています。
また濁りのない音質のエキゾーストノートは4-2-1排気の等長パイプによるもので、排気干渉を起こさないからゴロゴロという音がしないようになっています。
これはもともとSKYACTIV-Gの性能開発のために採用されたものですが、音質にも好影響を与えている要素ですね。
ちなみにトップエンドの7500rpmが近づくと躍度が減るのとともにエンジンの音も変化してドライバーに「そろそろレブリミットだからシフトアップのタイミングだよ」と教えるというニクい仕掛けがなされています。
機会があれば是非確かめてみてくださいね。
「曲がる」楽しさの秘密
NDロードスターはFR、もっと言うとフロントミッドシップレイアウトの素性の良さを生かして、曲がるのが楽しいクルマに仕上がっています。
ヨー軸も運転席と助手席の間に設定し、乗員を中止に向きを変えてコーナリングしていく独特の感覚が楽しいクルマです。
鼻先の軽さを生かしてミズスマシが水面を滑るようにスイスイと向きを変えてワインディングを走るのも楽しいですし、コーナリング中のクルマが自分の手の内にある感じもまたたまらないです。
思うに、ロードスターの人馬一体が最も光るシーンが「曲がる」時です。
- FR(そしてフロントミッドシップレイアウト)ゆえの素性の良さ
- ダイアゴナル・ロールによる挙動の掴みやすさと安心感
- アクセルワークによる荷重移動
FR・フロントミッドシップゆえの素性の良さ
NDロードスターは車両前部に搭載されたエンジンの動力をプロペラシャフトを介して後輪に伝達して後輪を駆動する、いわゆるFR(フロントエンジン・リアドライブ)方式のクルマです。
FR方式では前輪は操舵を受け持ち、後輪は駆動を受け持つというようにタイヤの役割分担がされています。
自動車の運転では、コーナリング時、減速による前輪への荷重移動が発生し、コーナー脱出時は加速するため後輪への荷重移動が発生します。
このためFR方式は自然で効率の良い、理想的な駆動方式と言えるかもしれません。
ですので余計なことをしなくて良いですし、結果、走りの動的質感も高めやすいと言えます。
またNDロードスターの場合、エンジンの前端が前車軸よりも後ろ側に収まったフロントミッドシップレイアウトになっています。
これによりヨー慣性モーメントが低減され、鼻先軽くミズスマシのようにスイスイと向きを変える走行感覚を生み出しています。
ロードスターの鼻先の軽さは個人的に結構衝撃的でした。
初めてロードスターを運転した時は軽快に自由自在に向きを変えて走る感覚がとても新鮮で、ハンドルを握りながら終始ニヤニヤしていました。
NDロードスターの軽快なハンドリング感覚を生んでいるのはヨー慣性モーメントの徹底的な低減。
フロントミッドシップレイアウトを実現しただけでなく、バッテリー等の重量物もできるだけ車両中心側に寄せて作られています。
エンジンの搭載位置をかなり後退させたため、エンジン後端はフロントバルクヘッドにめり込んでいます。
ダイアゴナル・ロールによる挙動の掴みやすさと安心感
ダイアゴナル・ロールによる挙動の掴みやすさとこれによる安心感はロードスターの「曲がる」楽しさの構成要素の大きな部分を占めています。
マツダ車の操縦安定性を司り、人馬一体の乗り味の総元締めとも言われる虫谷氏はインタビューで下記のように語っています。
「“ダイアゴナルロール”の状態を作り出すことで、コーナリング時にかかる減速G、横G、加速Gの流れを滑らかに乗員へ伝えることができる」
https://response.jp/article/2014/11/05/236618.html
ダイアゴナル・ロールの姿勢は、車両の状態をドライバーにフィードバックし、運転操作の実感を与えるとともにクルマとの一体感を生じさせるために重要な要素。
つまり一言で言って人馬一体の肝です。
NDロードスターのロールは大きいとよく言われますが、僕自身は全然ネガティブに捉えていなくて、むしろポジティブに捉えています。
- 運転操作へのフィードバックがあることで、日常域ではクルマの挙動がわかりやすくてとても運転がしやすい。
- クローズドコースでの限界走行でも、深くロールしてもリアや内輪にきちんと接地感がありグリップしていることがわかったのでむしろ運転しやすい。
ダイアゴナル・ロールによって日常の運転の交差点や高速道路のジャンクションやワインディングのカーブを曲がるときに心地のいい一体感を得られます。
特筆すべきは、クローズドコースでの限界走行時でも大きめのロールが決してネガにならない点ではないでしょうか。
上にも書きましたが、深くロールしたとしても内輪やリアの接地感は失わないので恐怖感も無いですし、むしろコントロールしやすいと感じました。
限界走行で重要なのはボディの水平を保つことではなくて四輪のグリップをいかに安定させるかですから、当然とも言えますね。
コーナリング時にどうしてもロールが大きくて気になる方はステアリング操作をもっとゆっくり丁寧にすることを心がけてみてください。
限界走行時でもハンドル操作はゆっくり丁寧に、これが基本です。
ハンドルを抉るような急激な操作をするとロールは大きくなりますし、クルマも曲がってくれません。
タイヤのショルダーも減っているかもしれないので、一度確認してみてください。
アクセルワークによる荷重移動
アクセルワークによる荷重移動で挙動が分かりやすく変化するのもロードスターの「曲がる」楽しさの一つの要素。
ロードスターとの人馬一体のコミュニケーションという感じがして、個人的に大好きな特性です。
早い話が、ロードスターはドライバーとの対話性が高いクルマだと感じました。
そしてそのドライバーとの対話性の高さをもたらしているのが、運転操作に適切な荷重移動を求めてくるセッティングです。
この点は僕も納車直後の頃に荷重移動を特に意識せずに運転していて「なんか思うように曲がってくれないな〜」と思っていた時期がありました。
その時のことは以前、»【NDロードスターの第一印象】めちゃくちゃカッコいい!だけど人馬一体感は希薄??に書きました。
要は、意図通りに上手に走らせられないのはドライバーの腕前のせいなのね、と認識したということです。
- コーナー手前でアクセルオフするとターンインの姿勢の安定感とライントレース性が如実に高まる。
- コーナー脱出時にアクセルを徐々に開いていくとヨーを打ち消してスムーズに立ち上がっていく挙動が分かりやすい。
- コーナリング中にステアリング一定でアクセルをオン・オフすると分かりやすく走行ラインが変化する。
ハンドルを切ったらただそれだけでハンドルを切ったなりに曲がってくれるクルマが良い、その方が「意のまま」だ!という意見もあるでしょうし、価値観は人それぞれだとは思います。
だけど僕個人的にはただ「曲がれ〜!」と言ってその通りに曲がるのは人馬一体とは呼べないんじゃないの?って感じます。
曲がるのであれば「曲がるよ」という意思をクルマに伝え、車両の姿勢が準備できてから曲がっていく。その準備ができていなかったり、不十分だったりすると上手く曲がれない・・・その方が人馬一体って感じがしませんか?
それに、上手にイメージ通りに走れたときの充足感もこっちの方が強い気がします。
アクセルを戻すと前荷重になり前輪のグリップが上がってよく曲がるようになり、アクセルを踏むと後ろ荷重になり前輪のグリップが下がって曲がろうとする力が弱くなる。
このアクセルの加減がかなり微妙な領域でもクルマの挙動が変わってくるのがまた楽しいところです。
この「対話性の高さ」は走る楽しさのところでも述べたエンジンのレスポンスの良さも一役買っています。
ドライバーがどんなに細かく丁寧な操作をしたところで、エンジンが反応してくれなければ意味がないですからね。
「止まる」楽しさの秘密
「止まる」ことに関してもNDロードスターは抜かりがありません。
確かにブレーキローターやキャリパーのサイズは控えめです。でも「絶対的な性能の高さ」はロードスターの目指すところではないということはここまでお付き合い頂いた皆さんには分かって頂けるはずです。
「絶対的な性能の高さ」よりも「クルマがドライバーの手の内にある感覚」の方が一貫して重視されているのがロードスター。
僕はちょっとした行きがかり上、赤信号で停止する0.2G一定のブレーキからクローズドコースでの1Gオーバーのフルブレーキまで色々と練習した経験があります。
そんな経験から言えることが、ロードスターは止まるときもコントロールがしやすく、かつ安心感があるということ。つまり人馬一体です。
クルマの運転の本質は速度コントロールです。
そして速度コントロールで重要になるのがブレーキングであり、ブレーキングのコントロール性が高いクルマは運転のしやすいクルマということに繋がっていきます。
- G一定ブレーキの行いやすさ
- 良好なコントロール性
- ドライバーの視線が上下しないピッチ軸の設定
G一定ブレーキの行いやすさ
上でも少し触れましたが、僕はG一定ブレーキをひたすら練習した経験があります。
- 例えば一時停止の線に目掛けてブレーキを開始し、ストップする直前まで減速Gを一定に維持
- 例えば赤信号で停止する際にストップする直前まで減速Gを一定に維持
- それで目指したところにG一定を維持したままでピタリと止まれるか、という練習
NDロードスターはこのようなG一定ブレーキが非常にやりやすいクルマです。
G一定ブレーキは体に感じるGの強さを一定に保ちながら、ブレーキペダルを踏む右足に感じる反力を一定にする必要があります。
- 右足裏に感じる反力が強くなれば減速Gが強くなる
- 右足裏に感じる反力が弱くなれば減速Gが弱くなる
- 右足裏に感じる反力が一定であれば減速Gも一定を維持する
この感覚をひたすら体に覚え込ませるしか無いのですが、NDロードスターはこの感覚がけっこう分かりやすく作ってあると感じます。
ストロークではなく踏力だけで減速Gの強さをコントロールできるブレーキのタッチを「レンガタッチ」と呼んだりします。ブレーキペダルを踏む感覚があたかもレンガを踏むかのような感覚だからです。
ロードスターのブレーキフィールはレンガタッチというほどではないです。
その点、最新のマツダ車であるMAZDA3やCX-30のブレーキタッチは非常に優れており、試乗した際にブレーキフィールは明確にロードスターより上だと感じました。
良好なコントロール性
NDロードスターのブレーキはコントロール性が良好です。
- 速度コントロールがしやすい
- カックンブレーキになりにくい
- ブレーキングのノーズダイブから徐々に踏力を抜いてフロントを浮かせてくる操作がやりやすい
コントロールが容易なのはブレーキローターが控えめなサイズを採用しているからだと思います。
スポーツカーとしての「見栄え」をとるなら大径ローターだと思うのですが、そこは人馬一体を突き詰めるにはどっちがいいのか?という判断をしていると考えられます。拍手を送りたいです。
ピッチング姿勢のコントロール性の良好さはブレーキの戻し側の操作性にこだわったことで実現しています。
ブレーキブースター(倍力装置)の特性を作り込むことで、ペダル戻し側の解像度を上げています。これによりドライバーが思い描いた通りにフロントが戻ってくるように仕上げています。
ブレーキの戻し側の操作性を上げたことで、コーナリング時にブレーキを戻しながらハンドルを切る際にピッチング姿勢が急激に戻らず、滑らかにダイアゴナル・ロールに繋げていくことができるからです。
ピッチング姿勢が急激に戻らないということは前輪の荷重も急激に抜けないので、グリップが安定します。
コーナリング時の人馬一体の感覚を生み出すために、ブレーキの戻し側の制御にもこだわって作られています。
ドライバーの視線が上下しないピッチ軸の設定
NDロードスターはピッチ軸が運転席の位置に設定されています。
- ブレーキングでピッチングしてもドライバーの頭の高さが浮いたり沈んだりしない
- ドライバーの姿勢と視線を安定した状態に保つことができる
こんな若干地味とも思えるようなことも、ロードスターの人馬一体の乗り味に一役買っています。
クローズドコースでの1Gオーバーのブレーキングの練習などもやったことがありますが、頭の位置が安定しているため安心してブレーキングすることができました。
これによりフルブレーキングの最中でもドライバーには余裕が生まれます。
恐らく日常の運転シーンにおいても、助手席の乗員にとってもブレーキング時に頭の高さに変化がないことは乗車時の安心感に繋がっていると想像できます。
まとめ
ロードスターの走りの楽しさの魅力に迫るということで、まずは走りの三要素「走る」「曲がる」「止まる」について見てきました。
- 平凡なエンジンパワーなのにアクセルを踏むのが楽しくなる「走る」楽しさの秘密
- ワインディングでの人馬一体こそがロードスターの真骨頂「曲がる」楽しさの秘密
- 自在なスピードコントロール無くして人馬一体なんて実現しない「止まる」楽しさの秘密
気づいたら1万字以上書いていました。めちゃめちゃ長くなってしまったので最後に振り返ります!
- SKYACTIV-G 1.5の専用チューニング
- 専用開発されたSKYACTIV-MT
- こだわりぬかれたエンジンサウンドとエキゾーストノート
- FR(そしてフロントミッドシップレイアウト)ゆえの素性の良さ
- ダイアゴナル・ロールによる挙動の掴みやすさと安心感
- アクセルワークによる荷重移動
- G一定ブレーキの行いやすさ
- 良好なコントロール性
- ドライバーの視線が上下しないピッチ軸の設定
僕が感じたNDロードスターの「走る」「曲がる」「止まる」の楽しさの秘密は以上です。
「走る」「曲がる」「止まる」って別々に分けて書くと、バラバラの話かと思ってしまいます。
ですが実際にはすべてがいい感じに調和して「ロードスターの走りの魅力」、すなわち人馬一体の走行感覚を生み出していると思っています。
ロードスターのデザインの魅力についての記事も書いています。
良かったら下のリンクから読んでみてくださいね。